ライフスタイルのパラダイムシフト―引きこもり生活の現状と将来を研究する(2020.05版)

今、ライフスタイルのパラダイムシフトが始まっている

 高速交通や通信の発達により外出の必要性が激減した今日、自宅など特定の箇所に留まる際の質を向上させる事の重要性が注目されています。自宅は単なる休息を取るための場所ではなくなり、移動の必要性が激減したことで移動そのものの要不要を厳しく問い詰め、「仕方なく行う」移動でさえもその質の向上が求められつつあります。自宅や事務所作業所など特定の箇所に留まることも、移動することも、誰もが最大限の価値を得る義務が与えられているのです。
このページをご覧の方で「私は引きこもりではない」とお考えでしたら、残念ですが既に引きこもり生活の応用とも思える行動を普段の暮らしに取り入れているかも知れません。でも、悲観することはありません。それは、貴方が引きこもり生活の優れている点を日常生活に取り入れているという賢明な選択を行っている、只それだけのことであって何ら間違いを犯しているわけではないのです。
このページでは、日常の生活水準向上策としての引きこもり生活をあらゆる角度から見つめ、記していきたいと思います。
(現在β版として、随時追記や訂正を行っております。)

多種多様な引きこもり達、大まかな分類をしましょう

 80年代辺りは、精神面での長期休養が必要な人達が精神科医等のアドバイスを受けようとせず(家族などが「世間体」を気にして受けさせない、というのも含めて)部屋の中に閉じ込められてしまった人達を連想させる言葉であった「ひきこもり」も、今ではムダ支出を抑えて資産作りに挑戦するために引きこもる人や両親など親族の介護のために時間や労力の削減策として引きこもり生活を取り入れる人、労働に就いている時に溜め込んだストレスを解消するため休日はしっかり引きこもって最高の休息をとることで次回の労働に備える……などなど、引きこもり生活も十人十色、多種多様化が進んでいます。

  • 貯蓄・資産作りタイプ― クレカのお得な使い方を研究したり、株主優待の有効な使い方を研究実践したり、一生引きこもれる不動産物件の獲得へ向けて必死になったり、早期リタイアの備えをしたり
  • ご家族の介護や育児など、家族を守るために必死な人達が自分自身の心身を守るための効果的な最善策として
  • 仕事へ全力投球するために体力等を蓄える方法として最高の休息を得る手軽に始められる最善策の一つとして
  • 料理を作ったり、花や実のなる植物を育てたり、ヒョウタンツギやこひつじのティミーを飼育したり、家電製品の研究をしたり、酒の飲み比べをしたり、ホームシアターやゲームオタクに萌えキャラに囲まれて……など部屋の中で行う娯楽教養が大好きで外出なんかやっている場合じゃないという人
  • 所謂サイレントテロリストが実践する際の方法論の一つ
  • ミニマリストが余計な外出をしないことに目覚めたことで
  • シンプルライフ実践の一環として
  • 日常生活の「カッコ良さ」を追求した結論としての様式

……と思いついただけでも、8つ。他にも在宅勤務で健康的な生活を手に入れたり、早期リタイアを実践している人が引きこもり生活で資産を守りながら暮らしていたりと引きこもり生活は健全なライフスタイルの一方法論として定着しつつあります。勿論、今後は引きこもり生活をこよなく愛する筆者でも想定できない引きこもり生活の様式が生まれてくることでしょう。

住生活への投資を重視する

 現在の引きこもりは、引きこもるところが必ずしも自分の部屋だけではありませんが、自分自身が引きこもるところの快適さや利便性の向上、そして光熱費など維持費の削減に余念がありません。つまり、最高の住環境を維持することを使命としています。これは生活の基盤となる「自宅」の整備を行うという当然の行動である事に他なりません。
収入を得る手段としては、怪我や病気などで就労出来ない場合を除いては在宅勤務の出来る職種に就いている方でしたら自宅で就労されている方もいるかも知れませんが、多くの最新引きこもり達は自宅ではできない仕事が「自分の出来る仕事」・「適職」であるケースが多いので、生活の糧を得るため仕方なく外出をしているようです。事実、引きこもりで無い人達も通勤地獄を嫌がることからしても最新の引きこもり達が 在宅勤務であったり、通勤地獄とは無縁でいられる働き方を望んでいることだけは確かです。
意外に思われるかも知れませんが、最新引きこもり達は「部屋が大好き」であることからDIYが得意であったり、建築やインテリア・エクステリアオタクであったり、場合によっては建築業での就業経験があったりすることがあるようです。今は亡き伝説のブログ、「ひきこもりおじさんのブログ」の開設者であったふわちょさんも建築関係の個人事業主(一人親方)をされていたと聞いています。このサイトをご覧の方も短期バイトや知人の手伝いをやったことならあるよ、という方もいることでしょう。

白物家電の研究に余念が無い

 白物家電の存在は、自炊の時間や労力を削減しや掃除洗濯の手間を減らすためなど住環境の向上に欠かせないものとなっています。例えばホームベーカリーを導入してその日から出来たての食パンで毎朝を迎えられたり、ピッツアを生地から作って楽しんだり、ケーキを出来たての自家製でティータイムを迎えたりすることが当たり前のように行える歓びを享受しています。
そうなると、当然掃除や洗濯も機材選択にこだわりを持っているのですが、必ずしも高額の商品を選ぶわけではなく格安品でも十分に役に立つのであればそれを選択します。つまり掃除機はダイソンのスティッククリーナーやルンバを選びつつ、洗濯機は乾燥機能が必要なければハイアールで済ませるというメリハリの付けた選択を行うのです。
冷蔵庫に関しては設置や運搬の場所が確保出来る限り、極力庫内容量の大きな機種を選択します。言うまでも無く、冷蔵庫は大型の機種(概ね総容量400ℓクラス以上)の方が実際の消費電力が少なくなり、電気代の大幅削減につながるからです。各メーカーのスペックデータをみても、200ℓクラスの約半分ほどの電力が削減出来るようで、これなら置き場所さえ確保出来るのであれば、購入予算が足りなくて月賦を組んだりクレカリボ払いの金利を払っても元が取れるはずです。
また、容量が大きいということは、保存出来る食品等の量も増やせるということで外出の機会を減らすことに余念の無い引きこもりにとって有利な条件を整えられるという面もあります。

温白色や電球色の照明を好む

 長時間部屋の中にいることの多い引きこもりにとって、夜間などに使用する照明は空調と並んで拘るべき項目の一つとなっています。
中でもLED化が進んだ頃から蛍光灯時代にはマイナーな存在として扱われていた「温白色」が注目を集めはじめ(大光電機社のサイトリンク)、癒やしと作業性を両立する光色として引きこもり達にも注目されているようです。

業務スーパーやカルディコーヒーファームを愛用する

 最新の引きこもり達はネットスーパーや生協の個配といった宅配サービスだけでなく必要であれば店頭での買い物も苦とはしません。食欲を満たすための準備としての外出は必要な外出であり、決してムダな外出ではないからです。その中でも業務スーパーや西友、カルディコーヒーファームで食料を調達することが多いようです。これらの共通点は、比較的低価格(カルディも紀伊國屋スーパーやイカリスーパーなどと比べたら安価)であるだけでなく世界中の優れた品物を「田舎」でも調達できることです。中でも業務スーパーと西友は低価格と輸入品の品揃えが豊富なため今すぐ入手したい場合にも重宝します。かつて業務スーパーは中国製冷凍食品を大量に売っているだけ、という印象だったのが今では世界中からの食品を手頃な価格で日本へくまなく届けるワールドフードストアとして飛躍的な発展を遂げているし、西友はウォルマートグループに属していることの利点を最大限に活用した品揃え(特に酒類の輸入品が個性的)が魅力となっています。
一方で、ドン・キホーテやラ・ムー、トライアルなどの純粋に安さを重視した店は、品質・品揃えの貧弱さや店舗レイアウト及び客層の劣悪さなどで引きこもり達にとっては余り魅力を感じていないようです。

見切り品は、節約のためではなく贅沢を楽しむために活用する

 食料廃棄が社会問題となっていますが、これらの解決にも引きこもり達は一役買っています。マスメディアなどでは、見切り品の購入を節約術として紹介していますが、実際には普段は買えない高級品を無理せず入手するために見切り品が選ばれていることが現状です。勿論引きこもり達は自宅で最高の暮らしをするために同じ費用なら「贅沢」が愉しめる高級品の見切り品を選択し、すぐに使い切って高級品の品質をしっかりと愉しみ切ります。
例えばチーズ。白カビや青カビで熟成するタイプや「ウォッシュ」タイプといった出荷後も熟成が進むチーズは賞味期限も短いため熟成の進んだ完熟品に値引きシールが貼られることが多く、引きこもり達や一部のチーズマニアがこぞって狙いを付けていることから一部の店では賞味期限ギリギリまで貼らないところもあるようですw

クラフトビールやプレミアムウイスキー等高品質(必ずしも高価な物では無い)な酒類を好む

お酒の呑める引きこもり達にとって「酒を呑む」ということは、単なるアルコールの摂取、すなわち「合法なドラッグをキメる」ということを意味する物ではありません。本来なら、摂取する必要性のない嗜好品である酒を呑むということにも必ず理由付けを要求します。所謂「蘊蓄」で片付けられがちな味や香りの違いとその理由、使用される材料や製法、産地……を調べ倒して、SNS等で情報交換して、場合によっては酒マニアが集う店や飲み会にも参加したりして、今や発がん性物質のアセトアルデヒドを生成するだけのアルコールを摂取するリスクを遙かに超える愉しさが得られる為にやるべきことの努力労力知力の行使を惜しみません。
そうなると、引きこもり達が呑む銘柄は大体の傾向が把握できると思いますが、単なるアルコールの摂取、合法ドラッグの代用品でしかないナントカドライとか、ト栗鼠ウイスキーといった銘柄には目もくれません。日用雑貨や食材にはPBを積極的に採り入れるにもかかわらず、同じ嗜好品でもコーヒーやお茶のPB商品なら嫌がらないのに、酒に関してはPB商品をスルーしてしまうのにはそういった理由があるからなのかも知れません。

サイレントテロリストとの共通点

 このサイトをご覧の方なら「サイレントテロ」をご存じだと思います。
主に就職氷河期に学校を卒業された人達が始めた消費を極限にまで抑制して資本主義社会のサイクルを止めようとすることで社会に対する抗議を行うムーブメント。今では氷河期世代以外の目を覚ました人々も巻き込んで、政財界メンバーの思惑とは裏腹にすっかり定着してしまい、今更になって彼らに媚を売る態度を取り始めていますが……遅くともリーマンショック騒動の頃には始めておくべきでしたね。それでも間に合わないと思ったけど。

そんな21世紀以降のライフスタイルを語る上で欠かせないものとなった、所謂「サイレントテロ」の実践と傾向のなかに「ひきこもり」が含まれています。

確かに、引きこもり生活を始めると外食の必要性はなくなるし、海外企業が幅を利かせる通販の利用が増えるし、これまた海外企業が幅を利かせるIT関連の商品を購入・利用する機会が増えるし、マイカーは質の高い移動時間を創出する可能性が高い輸入車(特にイタリア・フランスのメーカー車)が欲しくなるし……そもそもマイカーのない生活を理想に設定するので、百歩譲っても原付スクーターに留める事に努めようとするし、生活必需品も海外企業資本の西友や海外調達品が中心の業務スーパーやカルディコーヒーファームにいかりスーパーや紀伊國屋スーパー後者2店の見切り品購入の利用が多くなるし、そして先にも書いたように国内企業へお金を落とす機会が減り、自宅の白物家電やITの活用により消費そのものが大幅に削減できるため「サイレントテロの効果」は無視出来ないのかも知れません。
事実、地上波テレビの番組では「ひきこもり叩き」が連日必死になって行われていることからもわかるように、国民が引きこもられると困る人達の存在がいることは確かなようです。

しかし、既にお気づきのように、引きこもり生活を営む人々の全てがサイレントテロリストだというわけではありません。サイテロリストもいれば家族の介護や家庭サービスを充実させるためにできるだけ借金してまで買った(建てた)マイホームで休日を完結させて家庭家族を守ろうとする堅実なママパパさんに、少ない投資や消費で最大限の快適さを追求する高効率形消費にチャレンジする賢者に仕事がもらえなくなって「実質無職」になることを恐れて無駄な移動を排除した時間で収入を増やす機会の創出に勤しむ自営業者&企業経営者……と引きこもり生活者にサイテロリストは存在しますが、引きこもり生活自体がサイテロ(行為)ではないのです。

ミニマリストとの共通点

 サイレントテロリストの項目でも触れたように、物の所有を抑制しようとするミニマリストと引きこもり生活との親和性がありそうに思えますが、やはり関連性はありません。彼らは所有物を減らすことには注力しますが、時間や労力の削減には余り興味が無いようです。そもそもスタバでMacBookを広げること自体が「ひきこもっていない」し、見方を変えれば野宿をしている状況と何ら変わりないと言ってもよいわけで、引きこもるミニマリストも居ればそうでないミニマリストもいるのが現状です。

輸入車、特にイタリア・フランス車を好む

 部屋にいることが大好きな引きこもり達ですが、マイカーを持つ最新引きこもり達は意外にも「こだわり」を持っている人が多いようです。
その中でも引きこもり達に人気の輸入車が、イタリアやフランスのメーカーの車種。理由として、イタフラ車は「小気味よい走り」を特徴とする車種が多く、それが無駄な移動を排除して質の高い時間作りを目指す引きこもり達にとって思い通りの運転・走りが行える引きこもりに相応しい移動手段を提供してくれる存在として期待できるからです。
「移動時間が退屈にならない。」イタフラ車を運転したことのある人達は大抵そんな感想を口にしますが、移動することが苦痛になりがちな引きこもり達にとって、そういったイタフラ車の特徴は移動手段としての必要不可欠な要素として共感を覚え、引きこもり達のハートを鷲づかみにするのかも知れません。
ルパン三世がフィアット・チンクェチェントを颯爽と乗りこなす姿は、きっと、引きこもり達が憧れる移動の仕方なのでしょうw

※2000年以降からイタフラ車の信頼性は劇的に向上し、なかには日本車よりも信頼性の高い車種も出てきたことから、一般的なクルマ好きよりも引きこもり達が先に目を付け、それが引きこもりで無い人達にも注目されて新500やトゥインゴをよく見かけるようになったようです。

移動・外出することに関しての価値を厳しく問い詰める

 今更ながらのことですが、引きこもり達は「移動のムダ」には厳しい態度を取ります。例えば鉄道の利用で朝夕ラッシュ時の混み合う列車に乗ることはお金や時間を使って苦痛を得るという愚かな行為であると考える一方、「乗り鉄」達が敢えて各駅停車の列車を始発から終点まで乗り切る行為に関しては「その列車を愉しみ尽くす」という行為であると捉え否定はしない、といったようにです。見方を変えれば、乗り鉄はお気に入りの列車に引きこもっているという考えも成り立つわけで、そういったところでも引きこもり生活との共通点があるのかも知れません。

引きこもり生活は日常生活にもトヨタ生産方式を採り入れた結果の一つである

 トヨタが嫌う「7つのムダ」の中に、「運搬のムダ」というものがあります。運搬は価値を生み出さない必要悪ということで、これは先出の「移動のムダ」に当てはまります。言うまでも無く、日常生活で移動のムダを抑えるための手っ取り早い行動の中に引きこもり生活が含まれているのです。
言い換えれば、ライフスタイルのカイゼン活動とも言えるでしょう。

すなわち、グータラ生活とは似ているようで、全く異なる

 引きこもり生活って、とどのつまり、「グータラ生活」でしょ?
なんて思われた皆様、上記の項目をみて、引きこもり生活者の現状を把握していても同じだと言い切れるのでしたら、所謂労働奴隷の価値観に縛られているか、五感の劣化した人間にあるまじき生き物であるかのどちらか、もしくは両方でしょう。
まず、グータラ生活のばあい、「ヒモ」や「パトロン」といったスポンサーが付いている場合が多いですが、最新の引きこもり生活者は自力で収入を得ている場合が殆どです。スポンサー付の場合でも、相互理解に努めている場合が多く、地上波テレビの番組や新聞記事で出てくるような親などの同居人と対立している姿は引きこもり生活が問題ではなく、別の問題で対立している状況を疑うべきでしょう。

引きこもり生活はライフスタイルの一選択肢である

 繰り返しますが、現代の引きこもりは単なる社会逃避ではなく、社会に過剰な負担を強いることなく、己にも負担の強いる必要性のない次世代のライフスタイルを各人なりに模索、追求している状況・人達の総称です。地上波のテレビに出てくるようなタイプの人達も、「働いたら負け」という事実に気付いたものの、犯罪以外の不労収入を得る方法など自立するために必要な事柄などを探し出せずに精神的にもがき苦しんでいるのが現状で、地上波テレビで映し出されているグータラな姿は演出によるものと考えて良いでしょう。

投稿者: 引きこもり生活研究家

江戸アケミと手塚治虫の両氏を師と仰ぎ(?)、ヒョウタンツギとこひつじのティミーをこよなく愛する引きこもり生活の研究の余念が無い自称中年男性。